ルトガー・ブレグマン「Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章」(下)
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一九四九年に社会学者のチームが、アメリカの退役軍人、約五〇万人を対象とする大規模な調査の結果を発表した。その調査は、彼らを動機づけたのはが理想やイデオロギーではなかったことを明らかにした。イギリスの兵士が民主主義のルールに力づけられなかったのと同様に、アメリカの兵士は、愛国精神ゆえに奮いたったのではなかった。彼らが戦ったのは、国のためというより、仲間のためだった。
心理学者ロイ・バウマイスターは、敵は悪意に満ちたサディストだという誤った思い込みを「純粋悪という神話」と呼ぶ。
今日、兵士の射撃訓練の標的は、紙に描かれた同心円ではなく、現実味のあるん人形だ。加えて、銃の発砲は自動化され、兵士は考えることなく条件反射的に発砲する。狙撃手(スナイパー)の訓練は、さらに過激だ。効果が実証された訓練の一つは、訓練生を椅子に縛りつけ、特殊な装置で目を見開かせ、一連のおぞましいビデオを見させるというものだ。
「マキャヴェッリの記述は、すべてそのままチンパンジーの行動にあてはまりそうだ」と、生物学者フランス・ドゥ・ヴァールは、八〇年代初めに刊行された著者、「チンパンジーの政治学」に記している。
たとえば合衆国憲法について、歴史家は総じて、「本質的に貴族が定めた文書であり、その時代の民主的な傾向を抑制するために作られた」と考えている。
階層的な社会では、マキャヴェッリ主義者が勝つ。なぜなら、彼らはライバルを打ち負かす究極の秘密兵器を持っているからだ。
それは、恥を知らないことだ。
デンマークやスウェーデンのような国に無神論者が多いのは、偶然だろうか。これらの国では、法による支配が堅牢で、官僚機構は信頼できる。このような国では、宗教はその地位を追われた。かつて大量生産が伝統的な工芸職人を脇に追いやったように、官僚制度が紙を職を奪ったのだ。
インタビュアー:モチベーションを上げるためにしていることはありますか? スティーブ・ジョブズは毎朝、鏡に映る自分に「もし今日が人生最後の日なら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか」と問いかけたそうですが。
ヨス:わたしも彼の本を読んだが、あんなのは嘘っぱちだ。
資本主義者も共産主義者も、人に行動させるには二つの方法しかない、それはニンジンと棍棒だ、語る。資本主義者がニンジン(つまり、金)に頼る一方、共産主義者は主に棍棒(つまり、罰)に頼った。両者はあらゆる点で異なったが、同意できる一つの基本的前提があった。人は放っておくと、やる気にならない、というものだ。
「ヘルスケアMBAの学位をとった連中は、世界を秩序づける便利な方法を身につけたと思いこんでいる。自分は人事と財務とITを統括する、だから組織の業績はすべて自分次第だ、それがマネージャーの仕事だと、彼らは考える。だが、マネジメントをしなくても、仕事は以前と同じか、むしろ、以前よりうまくいくのだ」
「ものごとを難しくするのは簡単だが、ものごとを簡単にするのは難しい」
主要部品の生産時間の平均は、一一日からわずか一日に短縮された。さらに、競合他社は低賃金国への業務移転を余儀なくされたが、FAVIの工場はヨーロッパにとどまっている。
「そうしたいからする」人々ほど強力なものはない。
生物学者のあいだには、遊びは人間の本性に深く根差しているというコンセンサスがある。ほとんどすべての哺乳動物は遊び、他の多くの動物も遊ばずにはいられない。
彼(ギャレット・ハーディン)のわずか六ページの論文は、ヒッピーの理想主義をつぶした。そのタイトルは? 「共有地の悲劇」である。
「すべての人に解放された放牧地を想像しよう」とハーディンは書いた。「一人ひとりの牧夫はそこでできるだけ多くの牛を飼おうとするだろう」
オストロムは世界中のコモンズの例を記録するためのデータベースを立ち上げ、スイスの共有放牧地や日本の耕作地からフィリピンの共同灌漑やネパールの貯水池までを記録していった。そのいずれを見ても、ハーディンが主張したような悲劇は起きていなかった。
今日に至るまで、この永久基金配当金——略してPFD——は、無条件で全住民に配られている。PFDは特権ではなく、権利なのだ。
また、わたしの母国オランダで、ポピュリズム正当の支持者が最も多いのは、白人の居住者が最も集中している地域だ。オランダの社会学者チームは、(主に職場で)白人がイスラム教徒と交流する機会が多いと、イスラム嫌悪が減ることを発見した。
一九一四年のクリスマスの戦場で、平和が伝染病のように広がった時、影響されない兵士はほとんどいなかった。まれな例外となったのはバイエルン国第一六予備歩兵連隊に所属する頑迷な二五歳の伍長で、「そのようなことは戦時中に起きるべきではない」と言い放った。彼の名はアドルフ・ヒトラーだ。